
若月澪子著『ルポ・過労シニア』(朝日新書)を読み、現代における高齢者就労の過酷な実態に強い衝撃を受けた。本書では「どのような労働が時給いくらであるか」が詳細にレポートされており、非常に興味深く読んだ。そこで浮き彫りになるのは、シニアの雇用形態の大部分が非正規労働者としての契約であるという厳しい実情だ。何より驚かされたのは、紹介されている「高齢者が働いている事例」のほぼすべてが肉体労働であったことだ(ひとつの例外として営業マンの事例もあったが、それはあくまで例外に過ぎない)。
本書は現在の高齢者の実態を克明にレポートしたものだが、これを読んで私が抱いたのは、より深刻な未来への危機感である。今後、AIの浸透によって多くの人が職を追われることになり、その筆頭はホワイトカラーになるはずだ。結果として、職を失った人々の多くが肉体労働、特にエッセンシャルワーカーへと移行することが予測される。彼らが流れ込む先は、まさに本書で描かれている「高齢者が就労している労働」に他ならない。働き盛りの世代が同じ労働市場に流入してくれば、シニア層の多くは競争に敗れ、今の職すら追われることになるに違いない。
本書を読んだ読者の多くは、ここで描かれている高齢者の現状を「かなり悲惨だ」という印象を持つだろう。しかし、AI化によって労働環境が激変した未来から現在を振り返ってみれば、「仕事があったあの頃はまだマシだった」と言えるような事態にもなりかねない。本書は単なるシニア問題のルポルタージュにとどまらず、全世代に待ち受ける労働の未来への警鐘として響いた。
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